真上の階の「ドタドタドタドタ!」が消えた日

小言

今住んでいるマンションの上の階から毎日「ドタドタドタドタ」と走っている音がする。

恐らく子供だろう。

18時を過ぎると、

 

「ドタドタドタドタ!」

 

30分置きに、

 

「ドタドタドタドタ!」

 

大体毎日。22時頃まで、

 

「ドタドタドタドタ!」

 

たまに「ドガシャーン!」と、爆音。

その時はさすがにびっくりする。

めちゃくちゃ大きな怒鳴り声も聞こえてくる。

恐らく何かを倒したか落っことして怒られているのだろう。

たぶん子供。

たぶん子供だから怒るに怒れない部分もある。

うちにも子供がいるし。

下の階の方には申し訳ない気持ちもある。

仕事で疲れて帰ってきて、ドタドタと大きな音がするとちょっとムカつくこともある。

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マンションの騒音問題はどこでもある

下の階と上の階

エレベーターに乗り、1階のボタンを押す。

一つ下の階に止まる。

男性が一人。

 

この人が我が家の真下の階の住人だとしたら。

 

と考える。

実際に真下の階の人か確かめたりしない。

そんなことしたらうちが真上にいることを公表しているよう。

色んな意味で危険。

だからいつも一つ下の階で乗ってきた人がいたら、

 

深々と頭を下げるようにしている。

 

我が家の真下の住人であれば、毎日のように「ドタドタドタ!」と音が響いているだろうから。

夜中に騒ぐことはないにしろ、子供が夜泣きしてギャン泣き音を響かせる日もある。

だから下の階で誰かが乗ってきたら必ず深々と頭を下げるようにしている。

たとえ真下の階の住人でなくても。

それには理由がある。

上の階の住人はある程度予想がつくのだ。

 

「ドタドタドタドタ!」

 

この音の正体が「子供」だから。

一つ上の階でエレベーターが止まる。

その一つ下の私たちの階でも止まる。

その時に外人の家族が先に乗っている。

子供も少し大きめのお兄ちゃんと弟ちゃん。

 

「こんにちはー!」

 

「はいこんにちは!」

 

と元気に挨拶をする。

私は思う。

絶対に真上に住んでいる住人だと。

だけど向こうはどうだろう。

恐らく気が付いていない。

下の階の住人が真上の階の住人に気が付く事はあっても、

上の階の住人が真下の階の住人を特定するのは難しい。

これがまた騒音問題をややこしくさせるのだと思った。

だけど我が家にも子供がいる。

苦情など言えるはずもない。

むしろいつ苦情が来るかわからないからビクビクしている。

この「ビクビク」こそが下の階でエレベーターが止まり、

そこへ誰かが乗ってきたら深々と頭を下げる理由。

賃貸とは言え、引っ越しをする余裕も余力もない。

出来るならうまく立ち回りたい。

思い出のマーニー事件

うちの娘が一時期、「思い出のマーニー」が好きで良く観ていた。

ロードショーで録画したやつ。

子供がどう解釈して好きになるかなんてわかるはずがない。

物語の中でふとした拍子に出てくるセリフまで管理出来るはずがない。

むしろセリフを覚えているとも考えていない。

その時は。

ある日。

下の階で恐らく年上であろう女性が乗ってきた。

いつものように少しビクビクしながら頭を深々と下げる。

ここまでは行事のようなもの。

お辞儀も板についた。

その時娘が言ったのだ、人差し指をビシッと女性に向けて、

 

「太っちょ豚!」

 

「!?」

 

なぜ。

しかもそのセリフを。

 

「こら!思い出のマーニーのセリフを使わない!」

 

と具体的に叱る。

相手にもわかるように。

「はははー…すいませーん…」なんて言いながら一階に着く。

それにしてもすごいタイミング。

家で「そこのセリフ覚えたのかー!はははー!」なんて言ってたからその女性も笑ってくれると思ったのだろう。

これは完全に「自分が悪いな」と思った。

本気で教え込まないと一言で状況が一変する可能性を秘めていると確信。

なぜそこのセリフを覚えたのだ。

なんなら「大好き」を覚えとけ。

キャッチフレーズになってるだろ。

もののけ姫なら「生きろ!」だ。

 

「太っちょ豚!」

 

なんでだ。

3日程かけて「言ってはいけない方へ」修正しました。

隣の住人が引っ越すようです

別に特別深い交流があったわけではない。

ただ、家族構成が同じ。

という理由でなんとなく挨拶をしたり、情報を共有したり。

その程度の交流。

 

「来月引っ越すよ!」

 

「そうなの!?」

 

くらいの言葉の交換は妻同士でしたらしい。

引っ越しとなると、夫も休みの土日に行われた。

玄関も開けっ放しで養生テープが張り巡らされる。

これで引っ越しじゃなかったらなんだと言わんばかりに、

 

引っ越しである。

 

開けっ放しなもんでこちらが出入りすれば嫌でも目に入る。

 

「あれ?今日?」

 

「そうなの!大変…」

 

「どこに行くの?」

 

「一軒家買ってさー」

 

「いいなー。あこがれー。」

 

なんてやり取りをしてマイファミリーはエレベーターに乗って降りる。

我々が帰って来た頃にはもう引っ越した後だった。

空になったとわかった隣の部屋。

同じ家族構成だったこともある。

あるけどなんか。

なんかちょっと寂しい気持ちになる。

仲間が減ってしまったような気持ち。

特別交流があったわけではない。

それでも隣が空室になる。

寂しい気持ちだ。

程なくして、空室だった隣の部屋に若い夫婦が入る。

空室だったのはほんの2,3週間だった。

それはそれで寂しいというか、時の流れを感じる。

引っ越しの挨拶も済ませ、またすぐに馴染む。

前に住んでいた人のことを忘れていく。

いつか我々もこの部屋を出ていく日が来るのか。

そう思うと寂しいというかなんとも言えない気持ちになる。

壁紙が破れたところ。

子供が落書きしたところ。

子供のシールが張られた床。

 

そういえば初めて一人暮らしをしていた部屋。

今はどんな人が住んでいるんだろうか。

変なタイミングで妙な思い出に浸る。

思い出のマーニー。

また思い出した。

あれは親側のエラーだ。

次に会った時、深々と頭を下げると共に、

 

「この間はすみませんでした。」

 

と反省していることも伝えた。

上の階のドタドタドタドタが消えた日

本当に毎日。

必ずと言っていい。

18時から22時にかけて、

 

「ドタドタドタドタ!」

 

上の階から聞こえてくる。

たまに「ガッシャーン!」とわけがわからない破壊音。

後日、上からエレベーターに乗って降りてきた家族の妻と思われる女性の顔に大きな傷。

そんな日もあった。

 

「なんかあったな。あの時のガッシャーンかな。」

 

と思いながら、「こんにちは!」を交わす。

仕事で疲れた日もドタドタドタドタ。

今日は家で焼肉だ!の日もドタドタドタドタ。

あれ?今日は静かじゃない?の日もやっぱりドタドタドタドタ。

子供を早めに寝かしつけている時もドタドタドタドタ。

 

普通に考えたら、きっと、絶対、

 

うるさい部類の騒音。

 

なんなら普通よりも遥かにドタドタドタドタ。

我が家にも子供が二人いるし、ドタドタやる時もある。

あるけどそんなもんじゃなかった。

そう思っている。

そう思っているのです。

今でも。

 

そういえば昨日。

マンションに面している道路に引っ越しのトラックが停まっていた。

なぜか今思い出した。

 

だってドタドタドタドタが聞こえないから。

 

全く聞こえない。

ガッシャーンもない。

そういう事か。

引っ越したのか。

 

一つだけ、なんとなーく流して気に留めなかったことがある。

 

先週、玄関のモニター付きのインターホンに、

おそらく上の階の家族の妻であろう人が履歴を残していった。

 

用事があるならまた来るだろう。

その時はそう思っていた。

だから流していたのです。

 

何かを伝えたかったのだろう。

たぶん。

 

菓子折りでも持って。

ドタドタドタドタが無くなることを伝えたかったのかもしれない。

 

出かけてて出れなかったから、挨拶も出来なかったし、そもそも直接話をしたこともない。

 

「おそらく真上の階の人だな。」

 

そのくらいの疑いだけ。

特定したわけでもない。

結局交わした言葉は「こんにちは!」だけ。

ドタドタドタドタが消えた日。

 

たぶんそう。

絶対に真上の階の人が来たのだ。

お別れの挨拶と「なんか色々すみません」を伝えに。

毎日ドタドタドタドタ。

ガッシャーンドタドタドタドタ。

それがピタっと無くなった。

明らかに真上の階には人が住んでいないことがわかる。

だって何も聞こえない。

ドタドタドタドタが消えた日。

仲が良かった友達が遠く離れていってしまったような感じがした日。