ディーラーに行く。新しい車を買う為に。
「さすがに下取りは出来ないので廃車ですね。」
これまで乗っていた車を売って新しい車を買おうと思ってた。
どうやら買い取りが出来るような状態ではないらしい。
それが商売の都合上なのかどうかは専門家ではないのでわからない。
とにかく新しい車は必要。
欲しい車の条件を伝える。
店舗に置いてある車に条件が合うものは無かった。
店舗内のパソコンで一緒に探す。
「こんな感じはどうでしょう?」
スーツを着た営業マンにお勧めされる。
条件には一致している。
が、
車の形が気に入らない。
出来ればもっとかっこいい形がいいのです。
値段設定はそのままに、何とか探してもらえるようにお願いしてみる。
「わかりました。少しお時間を頂くかもしれないですが、見つかればすぐに連絡致します。」
新しい車が見つかるまで。
2人の整備士。
連絡先や細かい条件を伝え、お店から出ると、二人の整備士がオンボロの我が家の車を眺めて険しい顔をしながら議論している。
「あの、前のタイヤの空気を入れた方がいいです。これからやるので少しお時間いいですか?」
これはサービスで。
という意味で捉えた。
じゃなきゃアメリカの道端でいきなり洗車されてお金を取られる押しつけサービスだ。
さすがに「それはない」と思い、お願いした。
5分もかからなかった。
タイヤの空気入れはすぐに終わったが、その時に、前のシャフトがどうたらなんちゃらで「歪んでいる」と言っていた。
車に詳しくない私からするとなんのことだかわからなかったが、
「やばい」のか「まだ大丈夫なのか」で判断すると、断然「やばい」らしい。
どのくらいやばいかと質問すると、「真っ直ぐ走らなくなる」らしい。
「激やば」だ。
そうなったらハンドルがどう機能するのか想像もつかない。
常にハンドルを斜めに保たなくてはならないということだろうか。
早急に車を探してもらえるように「整備士さん」から営業に伝えるとのこと。
「不安を煽って必ず車を買い替えさせる作戦」かもしれない。
大人になると様々なことで騙されてきた経験がある。
その経験が今まさに警告音を発した。
シャフト。シャフト。
車のメーカーに勤めている友人がいる。
普段は他県で仕事をしているが、お盆の時期に帰ってくる。
ちょうど時期も重なり、発せられている警告音を止めるべく、友人に聞いてみた。
「少し車を見てもらいたいんだけどいいかな?」
友人の実家に車を持っていく。
焼酎でも一升瓶で差し入れしておけばいいだろう。
我が家の車を見て、
シャフトがどうのこうの言った後に、「やばい」とのこと。
シャフトか。
やっぱりそこがダメで、その場合は「激やば」なんだな。
「今すぐに壊れるかどうかはわからないけどいつ壊れるかもわからない。」
先日鳴り響いた警告音は騙される音ではなく、「車が壊れそう」の警告音だ。
正直者。
ディーラーからの電話。
「ご希望に沿うかどうかはわからないのですが、検討して頂きたい車がいくつかあるのでお越し頂けないでしょうか?」
もちろんすぐに。
先日見てもらった友人から車を買わない理由。
「メーカー」に勤めているので「新車」のみの販売だから。
新車は…買えないのです。
金額が条件に合わない。
だから中古ディーラーさまさまなのです。
…。
ディーラーへ。
「いくつか見つかったんですが、プリントアウトしたので見てもらえますか?」
どれも条件にはピタリ。
「実はこの中のほとんどは整備士が見つけて来ました。情けない話ではありますが。」
営業マンよ。それは言わない方がいいんじゃないだろうか。
「自分は仕事出来ません」と言っているようなものだ。
にしても。
この店には正直者しかいないのかと思った。
整備士といい、営業マンといい。
正直者だ。
この車、買います。
新しい車が我が家に来るまで。
最善を尽くす。
買います。とは言ったものの、その車はまだお店にはない。
「実物を見てから決めてもらいたいです。」
正直者め。
逆にこっちが恥ずかしくなる程の正直さ。
確かにその通り。
実物を見てから決めるのが普通。
あまりに正直者だから信用して「買います。」と言ってしまった。
後日。
結局買うことにはなるのだが。
条件にはピタリだ。
あの時、話し合っていた整備士は、実際に私が営業マンにお願いしていた条件とは別に、
メンテナンスのしやすさ、運転の癖、家族構成、持っている車の知識、かっこいいと感じる車の条件、などなど。
色んな角度から条件を見直して車を探したらしい。
と営業マンから伝えられた。
客の希望に対してだけではなくて、「最適なもの」を探す。
「今欲しい。」だけじゃなくて、さらに、先。
整備士がすごい。とか
営業マンがだめ。とかではなく、
お店がチームとして最善を尽くす。
全員が同じ方向を向いているチームというのは持っている力を超えて思わぬ効果をもたらすものである。
さながら甲子園。
下馬評を見事なほど力に変えるチームがある。
スポーツの世界では良くあることだと思う。
チーム力で勝つ。
最善を尽くし続ければ奇跡は起きる。
良いチームだと思った。
納車。
中古車とは言え、ちゃんと整備をしてからの納車となる。
それなりに待たされる。
こっちとしては購入を決めたら少しでも早く乗りたいが、ここを急かして整備がおろそかになる方が恐いので「お願いします。」と全部お店側のペースに乗っかる。
別に高い車ではない。
車の世界で言えば「安い部類」に入るのではなかろうか。
高い車ではないけど我が家にとってはすごく高い買い物。
中古車だけど大切にしたい。
だからこそ信頼出来るお店。
信頼できる人から購入したい。
特別安い車を探している客にも、随分なわがままを言う客にも、最善を尽くしてくれる。
そんなお店でいてくれるなら、きっと次の車も同じお店で探してもらうだろう。
買ったばかりの車が納車される前に次の事を考える。
ないない。
本当はない。
それがある。
奇跡みたいなもの。
すでにそう感じさせてくれている事が奇跡。
そんなこんなで納車完了。
これから新しい車での生活が始まる。
お店の対応やその他のサービスで満足すると、購入した車も大切にしてあげなくちゃと思うものです。
買い物は接客から。
大きな買い物と感じる金額は人それぞれかもしれない。
だが車は大きな買い物である。
個人でも家庭でも、大きな買い物と感じるはず。
大きな買い物をする時に何も考えずに購入するだろうか。
働いている側からすれば、毎日同じものを売っているわけで確かに特別感はない。
かもしれない。
だけど実際に購入を検討している方はどうだ。
とてつもない特別感がある。
むしろ特別でしかない。
その特別をなんとなくいつもの接客で流されても困るのです。
かと言って必ず最高の接客をして欲しいわけではない。
でもせめて、
客のニーズに合わせた接客は必要なんじゃなかろうか。
客側が特別感を感じていることをちゃんと理解しているのに「お店の中では安いからという理由で」適当な接客をする。
それじゃ買わない。
最適な車を一生懸命探して、提案してくれるお店や人から買いたい。
なんとなく働いてるようなスタッフに接客をされても車を売っているお店はたくさんあるわけで。
気持ちよく購入出来るお店を選びたい。
そもそも大きな買い物だけではなくて、何かを買ってもらう仕事っていうのは最適な接客を心掛けるべきなんじゃないかと。
偉そうに言ってみる。
中古車を買うしか選択肢は無かったけど。
それは「今は」って話で。
もし他のお店で「なんとなくな接客」をされて、中古車を購入したとしても、
次に自分が大金持ちになって同じお店で新車を買おうとは思わない。
新車を売るのも、中古車を売るのも、トマトをひとつ売るのも、同じ考え方でいいと思う。
もし我が家に、あの整備士が、
「美味しいトマトなんです!本当に!食べてみませんか?」
って言ってくるのなら。
買うよ。
そういう人からなら買うよ。
自分に合う人、合わない人はいるかもしれない。
いるかもしれないけど、
最適な接客を心掛けているからこそ、それに気が付く。
それと比べて、見た目や態度だけで全て見透かしたような接客をする。
だめ。
やだ。
そんな人から二度となにかを買いたいとは思わない。
って教えられた気がするのです。
あの整備士から。
次の車もお願いします。
次も中古車でも新車でも「あなたから」買いたいのです。
車のことはあまり詳しくないけど、あの人になら任せられる。
自分もそんな人になれれば仕事の成績も上がるのだろうか。
どうか感想をください。