UFOの存在を確信した日

小言

UFOを見た。見てしまった。車で移動中に。小学3年生の僕が。

今夜は眠れない。

3つ歳の離れたお兄ちゃんは見てなかったらしい。

小さい頃にXファイルで観たことがある。

UFOを見てしまったからその後、連れ去られて、体を改造される。

作り話だと思う。

でも実際にUFOを見てしまったが為に現実になるかもしれない恐怖。

今夜は眠れない。

 

誰にも言えず、そのまま次の日。

そもそもUFOを見たことすら信じてもらえない。

ほとんどの人が一度も見たことが無いから。

「見た見た!」と伝えても心底信用する奴はいない。

 

「ほんとかよー」

 

程度の関心と共に流されるか、

 

「嘘つけー。」

 

と信じてもらえない。

嘘をついているつもりは1ミリもない。

むしろ「UFOを見た!」という真実を興奮気味に伝えているだけ。

自分が見たものを伝えているだけなのに。

信じてもらえない。

スポンサーリンク

「嘘つき」になった日

本当に見た。

自分だけは知っている。

嘘じゃない事。

それよりもまだ、興奮が冷めやらぬ。

連れていかれて、改造されて、超能力が使えるようになるかもしれない。

そうなったら信じてもらえるだろうか。

そうならないと信じてもらえないのか。

本当に連れて行かれたらどうしよう。

恐怖だ。

今夜、宇宙人が自分の部屋の窓から入ってくるかもしれない。

少し前にテレビで見た。

ビカっと光って、いきなり窓が開いて、光の中から宇宙人が現れる。

そして手がこっちに近づいてきて…あっという間に連れていかれる。

そのあと実験台のような上に寝かされている状態で目覚める。

実験台の上に押さえつけられているような感じ。

その後、鼻の穴から鉄の玉のような物を入れられたりするらしい。

その鉄の玉がなんなのかわからない。

そういう番組を見た。

だから恐怖。

その時はあり得ない話だと家族で「嘘だー!」って言いながら見てた。

 

笑ってた。

 

家族は誰も信じていなかった。

自分も信じていなかった。

誰もUFOを見たことがなかったからだ。

 

後日、私は本当に見た。

嘘じゃない。

見てしまったら、信じるしかない。

嘘じゃないのに嘘になる。

本当の事は本人しかわからない。

別にそれは「UFOを見た」ってことだけじゃない。

心に抱えたもののほとんどは他の誰かに見せることが出来ない。

だから「嘘」になってしまう時がある。

あの日。

間違いなく空にUFOは浮かんでた。

見てたら「ビュン!」といなくなった。

だから自分の中では紛れもなくUFOであった。

テレビやラジオ、他の誰かが言う「UFOの動き」そのものだった。

今まで「UFOを見た!」を否定していた自分。

それがそのまま逆の立場になった。

そんな気持ち。

信じてほしい。

 

ただ、

UFOを見る前の自分を「UFOを見たと信じさせる」ことが出来るだろうか。

 

無理だ。

嘘はついていない。

これまで見てきたテレビや噂通りのことが目の前で本当に起きた。

それだけ。それだけなのに、

自分が「嘘つき」になった。

本当の事はいつも自分にしかわからない。

塞ぎ込む。

信じてほしくて、あまりにも騒ぎ過ぎたのか、誰も関心を示さない。

 

「ちょっと聞いてくれ。」

 

「どうせ嘘でしょ?」

 

まだなにも言ってない。

でも、それが嘘だと決めつけられる。

嘘をつきたかったわけではない。

むしろ嘘をついたわけではない。

でもそれを信じてもらう術がない。

どんなに考えても出てこない。

どうすればいいのか自分でもわからない。

記憶も曖昧になる。

 

「本当にUFOを見た証明はどうすればいい?」

 

写真も動画も残ってない。

それなら嘘がつける状況だと判断される。

証拠は無いのに、信じてほしくて、騒げば騒ぐ程、人が寄り付かなくなる。

そうなったら、

 

塞ぎ込むしかない。

 

自分にしか本当のことがわからない。

 

もうわかってもらえない。

 

本当の事を伝えるのが恐くなった。

宇宙人に連れ去られるかもしれない想像の恐怖より、今起きている誰も自分のことを信じてくれない状況の方がよっぽど恐い。

 

誰にも信じてもらえないっていう事実を家族に伝えるのすら恐くなる。

 

自分の気持ちも消していく日々が始まる。

全然面白くない。

毎日のように学校に行く。

でもほとんど話はしない。

必要最低限。

自分の気持ちなんてほとんど表に出さない。

何かをお願いすることもない。

ただ淡々と。

土日の家族の時間。

本当の気持ちは話さない。

話しても信じてもらえない。

またはなんとなく流されてしまう。

それすら恐怖。

だから自分の本当の気持ちは言わない。

聞かれたことだけに答える。

それが土日。

そしてまた月曜日からまた学校に行く。

淡々とこなす。

面白いことなんて一つもない。

 

自分に正直に生きられない環境ほど面白くないものはない。

 

なにもない。

淡々と時間を潰す。

勉強をしてスポーツをして、なんとなく会話をして。

全然面白くない一日が今日も終わる。

本当は自分を信じてくれないことにヘソを曲げただけ。

引くに引けなくなって意地だけで孤立したダサい奴。

わかってた。

小林先生。

学校から帰る時間になると必ず後ろから声をかけて来る人。

小林先生。

担任でもない。

たぶん事務かなんかの人。

先生かどうかもわからないけど学校にいる大人は全員先生と呼ぶ暗黙の決まり。

とにかく帰りの時間に後ろから声をかけてくる。

 

「また明日ね!」

 

と肩を「ポン!」っとする。

もちろん自分以外にも同じようにやる。

最近それがすごく気になるようになった。

別にいつもと変わらない。

いつもの帰り道。

一人で帰る通学路。

 

肩に残る感触。

 

辛くなるのだ。

思い出すと辛くなる。

全然気にならなかった「また明日ね!」がこんなに辛いと思わなかった。

本当は学校に行きたくない。

でもそれを言ったところで誰も真に受けてくれない。

だから「また明日ね!」の当たり前感が妙にウザイ。

 

どうせ明日も面白くない。

絶対に面白いことなんて起きない。

笑えることなんて一つもない。

肩に残る感触がウザイ。

手を振り払った。

あまりにウザったいので。

帰り際、いつもの「また明日ね!」の肩へ伸ばした小林先生の手を叩いた。

いや、振り払った。

本当の気持ちだった。

 

「やめてくれ。」

 

もちろん口には出さない。

だから振り払った。

次の日から小林先生がいない間に隙を見て帰るようになった。

どうせなら宇宙人に連れ去ってほしい。

改造してほしい。

こういう想いごと改造してくれれば楽になるのに。

宇宙人がなんでさらいに来てくれないのか。

どうしてアメリカ人ばかりさらうのか。

Xファイルの見過ぎで、超常現象とかオカルト的な話はアメリカが本場だと思ってた。

もちろん家族にそれを相談することなんてない。

でもどこかでアメリカに行きたいと考えるようになってた。

 

つまり、宇宙人がさらってくれそうだから。

それだけ。

めちゃくちゃ痛くてダサいヘソ曲がり小学生になっている。

学校からの電話。

最近あまりにも、急激に学校にいる時の態度が変わったので、学校から電話がかかってきたらしい。

親からも「なにかあったのか?」と言われる。

本当の事を言おうか悩んだけどやめた。

どう考えても理由がダサい。

 

「UFOを見たってみんなに言ったら嘘つき呼ばわりされてヘソ曲げて内気になった。」

 

何度考えてもダサいのです。

めっちゃダサい。

でもそれが全て。

ダサ過ぎて逆に言えない状況になっている。

でも学校から電話がかかってきた親はそれなりにしつこい。

 

先生に見つからないように帰ったり、その他もろもろの学校での反抗を突いてくる。

 

引かない。

今日の親はマジだった。

やっぱり親であった。

やっぱり一番心配してくれる人であった。

やっぱり誰よりも叱ってくれる人でもあった。

全てを見透かしたように突いてくる。

 

「わかった!わかった!わかったから!言うよ。言う。全部。」

 

あの日、家族と車で移動中にUFOを見たこと。

それが恐くて初めは言えなくて、次の日最初に学校の友達に話した事。

誰も信じてくれなくて「嘘つき」になってしまったこと。

それからみんなに本当の事が言えなくなって学校に行くのも面白くなくなったこと。

家族にもその事が言えなくなったこと。

だんだん塞ぎ込んでこんな形になってしまったこと。

 

ダサい。

ダサいけど恥ずかしくて涙が止まらないのです。

 

「ごめんなさい。」

 

謝った。

色々めんどくさい事をしてしまったことに対して。

ヘソを曲げていただけなのに、これだけの問題にしてしまったことに詫びる。

 

そしたらお兄ちゃんが隣から言ったのです。

 

「あの日。本当は俺も見てた。」

 

誰よりも連れ去られることに恐怖を感じて「嘘」をついたのはお兄ちゃん。

証言した。

でも一回嘘をついたのはダサい。

 

自分は嘘をついてない。

兄弟揃って、あの日。

 

僕たちはUFOを見てた。

 

UFOはいる。

それだけで十分だった。

すごく嬉しかった。

ヘソも真っ直ぐ。

 

でも、宇宙人がいるかはわからない。